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2006/06/16//Fri.
髪は長い友達
思えばずっと一緒に歩んできた。
髪の毛のことが、大好きだった。

初めて喋った時、初めて立った時、初めて勃った時。いつでも僕の頭には毛が生えていた。それはこれからも変わることなく続いていくことで、僕はこの身に変えても彼を守り続けるだろう。

髪の毛は僕にとっての唯一無二の友人なのだ。

彼となら、お風呂もトイレも一緒に入れる。年中まとわりつかれたとしても嫌な気持ちにはならない。むしろ大歓迎だ。抱かれたっていい。なぜなら、そこには両者の深い愛があるから――

でもそれは彼の気持ちを少しも考えない、僕の傲慢な考えだった。僕の彼に対する愛は単なる押し付けでしかなかったのだ。押し付けの愛ほど虚しいものはない。


そう、彼はひとり静かに泣いていたんだ……


先日、僕は髪の毛を編み込んだ。僕の大きな体躯に隠れている髪の毛は、正直な話、それほど存在感を放っているわけではなかった。僕の惰性で伸びきってしまった髪の毛は、「キモティー」と人に呼ばれ続けていた。

僕の悪口を言われるのはかまわない。でも、少しの落ち度もない彼を責められるのは我慢ならなかった。キモティーだって?ふざけるな。彼がここまで成長したのは、僕の怠惰な生活ゆえだ。髪の毛に非はない。

だから僕は、彼にスポットライトをあてたかった。
誰が見ても存在感を放つ髪形――コーンローしかない。

いきり立った僕は、すぐに美容室へ駆け込んだ。
彼がアキバ系からジャマイカ系に変わるまで、そう時間はかからなかった。

それからというものの、彼の存在感はとてつもないものになった。

いつもはしつこい新聞の勧誘の人たちも彼を見て、10秒で逃げ出すようになった。スーパーで買い物をしていると見知らぬ子供に「ムシキングみたいー!」と言われた。

全てが順風満帆に思えていた。
しかしこの髪型には一つだけ問題があった。


シャンプーが出来ないのだ。


シャワーで洗い流すことは出来るのだが、シャンプーは毛穴に詰まってしまうのでご法度なのである。しかも、髪の毛をこすると編み込まれた髪の毛はすぐにほどけてしまう。

残念だ。まことに残念なことだ。その結果――
彼はその存在感と引き換えに、汗臭さと大量のフケを手に入れることとなったのだ。

それでも僕は、彼の存在感と名誉を守るために耐え続けた。人々は僕達に罵声をとばすが、ひるむようなことはしなかった。ここで折れたら僕達の負けだ。

「ねえ、フケでてるよ?」だからどうした。
「ねえ、あたまクサいよ?」お前らには関係ないだろ。

世界中が彼を罵倒しようとも、僕は彼の味方でいるつもりだった。彼も同じ気持ちを僕に抱いていると思っていた。必ず最後に愛は勝つんだ。



しかし、現実は違った。彼は、彼は……



彼は心底シャンプーを欲していたのだ。



今日の朝目覚めると、大量発生したフケは白い粉雪のように僕の寝床に散在していた。黒いシーツが白く染まる。この白さこそが彼の悲しみの表情に他ならなかった。

彼の心の叫びが聞こえてきた。
僕はそのとき、やっと本当のことに気付いた。


愛はきっと奪うでも、与えるでもなくて――
気がつけばそこにあるものなのだと。


僕は久方ぶりに編み込まれた髪の毛をほどき、頭皮をシャンプーで洗った。ゴシゴシ、力いっぱい洗った。その結果――



めちゃくちゃ髪の毛抜けたし。



無残な姿で浴場に抜け落ちる髪の毛たち。僕はその一本一本に泣きながら詫びた。ごめんな、お前たちの気持ち、考えてなかったよ。

彼らが僕を許してくれたかはわからない。ただ、排水溝へ流れるように消えてゆく彼らは、少しだけ笑っているようにも見えた。いや、そうだと信じたい。


「楽しい時間をありがとう!」


きっと僕にそう言ってくれていたはずだ。今日からはシャンプーもリンスも、トリートメントだってしてあげるさ。また、出会った頃の二人にもう一度戻ってみよう。そして二人で手を繋ぎ、幸せになろうじゃないか。




 


長文お読み頂き、ありがとうございます。
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