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2007/03/26//Mon.
男のビデオ
説明不足の言葉というものは、なぜか心に引っかかるものである。人は足りない物を自分なりに考え、妄想を膨らませることが出来る。そういう点を考慮すると、説明不足の看板は、時に絶大な広告効果を生む可能性がある。


「男のビデオ、高価買取中」


これは僕が就職活動中、とある駅付近で見かけた一言であった。果たして、これは何を意味するのであろうか。最も妥当なのは、「男のためのアダルトビデオ」といったところであろう。恐らく、これを見た人のほとんどが、そう考えるのではないか。

しかし、この言葉足らずの看板に、人を惹きつけて止まないパワーを感じるのは僕だけであろうか。


「男のビデオ、高価買取中」


確実に説明不足なのである。しかし気になる。そのままの言葉を受け止めると、「男たちがわんさかと出演しているビデオ」を「高価買取中」しているかもしれないのだ。いや、普通に考えるとそういうことになる。


僕の目の前に、ある光景が広がった――


筋骨隆々とした男子が浜辺を走り回っている。
画面に向かって水をかける彼を見ると、何だか一緒に水遊びをしているよう。
真夏の日差しを受けている彼は、照れくさそうに視線を送ってくる。
水浴びで濡れた髪の毛の先には、真珠のような水滴。
満面の笑みで飲むトロピカルジュースは、まるで初恋の味。

海辺で遊んだあとは、魅惑のシャワータイム。
顔に似合わない体つきが、見るものを釘付けにする。
でも、水を弾くその素肌は、まだまだ子供のようで。
大人の階段を上っていても、君はまだピーターパン。

夜の彼は、昼間とは別の顔を見せた。
眠たいのか、それとも酔っているのか。
艶やかなその瞳、視線が心をくすぐる。
シーツがはだけて、露呈された脚。
僕は目のやり場に困ってしまう。
困った僕を見て、少しはにかむ彼。

その笑顔は、天使のようで、堕天使のようで。

さっきまで見ていた彼はもういない。
そう、ひと夏の恋が、夜が、彼を大人に変えたから――



もしかしたら、こんなビデオがあるかもしれない。店内に入ってみれば、その答えは簡単に見つかる。そう、その一歩が道となり、答えを示すのだ。しかし、僕はそれを拒否した。


そう、人生とはミステリアスであるからこそ面白いのだから。


 


面接の前に見るもんじゃないしね。
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2007/03/09//Fri.
鼻毛の話
社会生活を営む上でどうしても「言いづらいこと」というものはある。
例えば可愛いアノ娘の前歯に青ノリが付着していたとしよう。とても指摘しづらい。しかしそれ以上に指摘しづらいものがある。それが――鼻毛の脱線事故だ。

僕が二人の女性と話しこんでいた時の話。

その二人の女性は世間一般でいう「可愛らしい」「オシャレな」女の子で、僕はそんな友人たちと、和やかにお喋りをしていた。お互い大学三年生ということもあり、会話の内容は就活や将来のことなど、わりと真面目な話が多かった。各々、最近は就活に勤しんでいるので、互いの苦労話や情報交換で盛り上がっていたのだが、僕には一つ、気がかりなことがあった。


美香ちゃん(仮)の鼻毛が飛び出てたのだ。


美香ちゃんは、いうなればPINKYに出ていてもおかしくない、とても綺麗な女性だ。服装にも気を使っているらしく、アルバイト代はほとんどオシャレのために消えていっているという。性格もおしとやかで、彼女へ求愛する男性は少なくない。


しかし、鼻毛は飛び出ているのだ。


その飛び出した鼻毛は、体全体の割合からすると、わずかに0.01%程度であろう。だが、その存在感は凄まじく、僕の全神経を惹きつけるには十分であった。そのうち、見ている僕が恥ずかしくなってしまい、もう一人の女性である、千春ちゃん(仮)へ話を振った。しかし僕はすぐに、その行為を後悔した。そう、それは悲しみのデフレ・スパイラル。なぜなら――


千春ちゃん(仮)も鼻毛が飛び出ていたからだ。


彼女は将来、化粧品会社へ勤めたいという話をしていた。それもそのはず、千春ちゃんの美容に対する造詣は深く、友人たちにも一目置かれている存在である。男の僕から見ても、素晴らしい知識と技量を持っている。


しかし、鼻毛は飛び出ているのだ。


ばっちりと決まっているメイク。それでいて自然体に見えるのは、千春ちゃんだからこそ成せる業であろう。しかし、一本の毛が、全てを台無しにしているのだ。彼女にはぜひ原点に戻ってもらい、スキンケアの前に、鼻毛のケアをしてほしいものである。


二人の美女、いや、鼻毛に囲まれた僕は、ただただ狼狽していた。このようなことがあってよいのだろうか。いや、決してよいはずはない。麗らかな年頃の女性が、鼻毛など飛び出してはいけないのだ。どう考えても、お互いに気付いているはずであった。飛び出し方が尋常ではない。


お互い、「うわあ、この子、鼻毛がチラリしてるわ」なんて思っているのであろう。
自分もポロリしているのに。


そのうち僕は尿意に襲われ、お手洗いへと足を運んだ。せっせと用事を済ませ、手を洗う。そして目の前にある鏡に目をやった。しかし僕は、目の前に映る自分の顔を見て驚愕した。


僕の鼻毛もロケットダイブしていたのだ。


とても恥ずかしい気持ちになった。結局、全員飛び出していたのだ、鼻毛は。僕はあわてて引っこ抜き、そしてなぜか不思議な気持ちになった。



さっきの会話中、みんな鼻毛のことを考えていたのかなあ、と。



真面目な話の最中も、結局、鼻毛なのだ。
各々の進路よりも、相手の鼻毛が気になっているのだ。

僕が会社に落とされた話をした時、彼女たちは「残念だね」と慰めてくれた。
本当は、僕の鼻毛が「残念だね」だったのではないか。


鼻毛のせいで、僕は人間不信になった。


そう考えると、1.5センチの鼻毛は偉大である。





結論。





鼻毛、かっこ悪い。






 



途中から話が変わったけど、まあいいや。
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